働き方改革EXPOパネルディスカッション
ひろがる働き方とワークプレイス ~多様化する働き方とワークプレイス~

2018年7月11日

  • 【コーディネーター】
    WFM/フルリエゾン 代表
    日本オフィス学会 企画委員会 委員長
    古阪幸代 氏
  • 【パネラー】
    株式会社イトーキ
    ワークスタイル研究所 所長
    海野仁志 氏
  • 【パネラー】
    プラス株式会社
    商品ブランド開発課 課長
    溝口寛二 氏
古阪氏

 今回は、日本オフィス家具協会主催の『オフィスが変われば働き方が変わる』というコンセプトのもと、「ひろがる働き方とワークプレイス」と題して、パネルディスカッションをさせて頂きます。日本は今、少子高齢化による深刻な労働人口減少や医療コストの増大と急激な空き家の増加、グローバル社会での微妙なポジション、年々激しくなる自然環境の脅威など、かつてない多くの課題に直面して、働き方改革をはじめとする大きな変革を迫られています。その解決策のメインは意識改革や制度改革ですが、現代人は一生のうちの75%は何らかの建物の中で過ごすといわれる中、建物や設備環境も改革のための重要なサポート要素です。そのうち、本日は、「いかにして快適に働くか」という環境に焦点を当てて、お話を頂こうと思います。

海野氏

 我々は、広がる働き方とワークプレイスということに対して、これから10年先ぐらいの働き方ってどうなっていくんだろうという研究をしています。
 1つは、働く場所と時間を自分たちが自ら選べるようになりますよということが言われつつ、また、1社1プロジェクトに従事するのではなく複数社のプロジェクトに同時に従事するような、そんな自分の能力の発揮の仕方、選択の仕方になってきます。すると仕事は与えられるものではなくて、自分から引き込んでいくという、仕事に対する価値観の変化が表れます。
  それから副業・兼業・フリーランスという言葉もよく聞かれますが、企業の内外を、自分が求められる場、あるいは企業とかコミュニティにどんどん自分が自主的に参加していくというようなスタイルになってきます。
 また、ニーズに応じたプロジェクトを自分で選択するようになり、最後に、ある意味企業という1つの目的・ゴールに向かったコミュニティだけじゃない、新たなコミュニティというものが形成されてきます。このようなことが2025年ぐらいに始まっている1つのワークスタイルの要素ということで、我々は研究しています。
 今は場所という概念を、働く場所はオフィスの中に限って、ABWやフリーアドレスなど自分が一番能力を発揮しやすい場所を選びながら働くという、割とコアの中だけの議論が高まっていますが、これから先はその枝葉のように、外の世界に働く場が広がっていきます。なぜならば、シェアオフィスやコワーキングスペースなどの場を提供するような不動産業者たちがどんどん出てくるからです。
 10年後の日本の働き方がどう変わっていくんだろうかということで、5つのプレイスについて我々が想像する働くシーンを描いてみました。
 1つめ、コアオフィスというものは、知的創造サイクルに乗っかる最も高機能高密度な機能、スペース、空間だけが多分残っているんだろうなというイメージです。ひとつは、我々が描いているAI会議室みたいなところです。人と人が集まって創造的な議論をするというのがリッチなオフィスのキー。人は議論だけに集中すれば良く、ファシリテーターやデザインシンキングのような手法面はAIなど技術の方が補ってくれて、それを誘導してくれるかもしれない。そこに人間は知識だけを投じるといった世界。もうひとつはいま会議室が足りないとどこでも言われていますが、そういうことはなくなってくるだろうと思っています。語りを求める人たちは、当然ながらコアオフィスに集まり、そこで集まって人と人がコミュニケーションをしたときに技術が補ってくれさえすれば、どんなオープンなスペースでもここは打ち合わせのためのスペースと言い切ることができる。技術が補ってくれると、会議室がいらなくなるはずです。
 また、今で言うところのオフィス空間はこれから先もあり続けるだろうなと思っています。ただ、レイアウトみたいな概念は必要なくなると思います。なぜなら家具というものがレイアウトの最適化を図ってくれて、そこで働くことによって知的生産というのを自然に生み出すという、ある意味ファシリティが知能を持つ時代がやってくるだろうと思うからです。
 また、オフィスで最もリッチな空間はオフィスにおける大人たちの遊び場じゃないかなと思っています。ガレージスペースのようなところで自分の思い、発想をどんどんどんどん形づくっていく。そういうところは、コアオフィスに残るだろうなと思っています。
 それからオフィスの中でのファーストクラスみたいな空間を、優秀な人材に一定期間与えて最大のアウトプットを求めるという考えも始まると思います。
 2つめはホームオフィス。子育てしながら、介護しながら、でも会議に仕事に参加するという時代がもう間もなく来ると思っています。家電や照明などがスピーカーなどのデバイスに変わっていて、瞬時にオフィスとつながれる世界です。
 3つめはサテライト。保養所とか研修所というのが多分余ってきていると思います。そういう環境でしか出ないアイデアや発想みたいなことを、合宿形式で働いて、成果を生み出してコアに戻ってくるという、そういう使われ方をしたらいいんじゃないかと思います。
 4つめがシェア。食というものを機にコアオフィスに集まるということを、1社の食ではなくて、複数社が共有する食というものをつくれば、より企業の枠を超えたナレッジ交流とか、あるいは人材交流みたいなものも生まれてくるんじゃないかと思います。
 対極的に、先ほど古阪先生からも出たけれども、街中では、どんどん空き家が増えていて10年後には3軒に1軒が空き家になると言われています。そういうところを開放して、ワークのためのスペースとして展開するという文化がどんどん発展していくと思います。そうすると、スマートキーで登録している人は、街中を渡り歩くように仕事をし出すだろうというのが、シェアオフィスでの働き方です。
 5つめがモバイル。移動する時間さえもビジネスに使っていくという世界がモバイルモビリティの中でどんどん加速していくだろうと思います。
 このような働き方の変化の中で、企業が考えなければいけないのは、オフィスの中をどうつくるかだけじゃなくて、どんなオフィスポートフォリオを持つかという戦略が必要な時代になってくると思います。

溝口氏

 私のほうからは、今日のオフィスをどうしていくべきか、どのように考えるかの話をさせて頂きます。現在のオフィスがどのように変化しているのか、広がるワークプレイスをマップ化し、その中にフルマイというものと、当社が提唱しているイゴコチメイキングの関係を説明いたします。

 
 ワークプレイスの4象限を、縦軸にテイスト軸(カジュアル⇔トラディショナル)と横軸にフルマイ軸(クリエイティブオフィス⇔レガシーオフィス)でマッピングしています。
 フルマイ軸について、当社は『IGOCOCHI making』というコンセプトを提唱しています。それは、働き方の課題を空間で解決し新しい働き方へ活動を変化させる提案になっています。人の活動が知的創造へ移行するときに多様性が求められ、3つの行動モード(集中・協働・交流)を支えるような環境が必要になります。それらを支えるフルマイとして「ふらっと留まる」「わいわい討議する」「てきぱき作業する」「じっくり集中する」「さくっと共有する」「ゆったり熟考する」の6つのフルマイに整理しました。その中で知識処理ですとか知識創造をする場、情報共有する場、集中する場などを広げていく考え方です。
 次にテイスト軸です。働き方改革やクリエイティブな思考を取り入れることで、トラディショナルなテイストのオフィスからむしろカジュアルなテイストのオフィスに向かっているという感覚を皆さんお持ちだと思います。そこがなぜなのか正直謎なんです。
 先日、米国シアトルのTableau社(註:タブローソフトウェア(Tableau Software)。BI(ビジネスインテリジェンス)に特化したインタラクティブなデータの視覚化ツールを提供しているソフトウェア会社。)を見学しました。オフィスコンセプトは「シアトルを感じる」的な切り口で、オブジェなども地元のアーティストを起用、シアトルに対する家族意識みたいなものを出していくことをフィロソフィーとしていました。また今のIT企業、特に柔らかく働く人たちにとって、実はセンターオフィスは非常に重要と仰っていました。そして、ワーカーがセンターオフィスに求めていることは、コミュニケーションにより一緒に新しいものをつくっていくことだとのこと。アナログなのですがポストイットを使って活発な議論を行なっているとも話してました。
 10年前、オフィス学会での米国企業見学会の際、コミュニケーションの仕掛けをまとめたところ、「食」「コミュニケーションを図る自然やアート」「メンバーの写真など遊び心」「デジタル技術・IT」「無造作感や雑然とした空間」という5つのポイントがありました。この10年で米国オフィスの変化を考えると、実は意外と変わっておらず、カジュアルな環境などは、あまり変化せず10年前に出来上がっていたのだなと感じました。変化したのは「デジタル技術・IT」で、スマートフォンや4Gの世界はコミュニケーションをあるところまで満たしているのだと感じました。
今後オフィスのカジュアル化がどこまで行くのだろうと考えていくと、そんなに過度に立っていくようなことというのはないと思います。むしろ、エンゲージメントを考えると、好きな時間に好きな場所でワークできる、普通のカジュアルさがこれからは重要なのだと感じています。

古阪氏

 ありがとうございました。お二人からお話を頂きましたが、そもそもどこでも働けるようになってきたら、センター(コア)オフィスは必要なのか?といろいろな会社で言われています。
 今のオフィスはフリーアドレス化で面積は縮小傾向にあるし、家でも働けるようになったら会社のオフィスって何のためにあるんだろうという疑問も出てきていると思います。このあたりを議論したいと思います。

海野氏

 IT技術により、どこでも仕事が出来る環境は作れます。そうなった時にどんどんそれらは広がり、かつ実態の無いオフィスになっていきますがその時、企業体/組織体としての会社や仲間は、どこで形成されるのかというのが行き着くところですね。
 会社での仕事を機能分解した時に、それぞれオフィス以外のところで、あらゆる仕方や設えがあると思いますが、組織だとか企業という一体感やエンゲージメントはどこで形成するのかというのは、やっぱり人と人が会うということが必要になる。そういった意味からコアオフィスは高密度になって残される機能であることは間違いないと思います。
 そこで出会い、触れ合い、一緒になってコミュニケーションを取る。最大のナレッジワークはディスカッションすることですので、そのスペースは絶対に残るだろうというのが我々の思いです。なので、いかにその場に集まりたくなるような要素を企業が用意するのか、社員はどういう体験価値を得ることができるのか、それによって企業は見返りとして、社員の一体感やベクトル・方向性の一体感を生み出し、それを企業の価値提供に結び付ける。これが、これからの純然たるあり方になると思っています。

古阪氏

 企業や組織はこれからも存続していくのが前提ですね。溝口さんはどうでしょうか?

溝口氏

 いま海野さんが仰った通り、コミュニケーションやコラボレーションといったものはセンターオフィスに残るだろうと考えています。その一方で、分散化しているという話の中で、集約化されていかなければいけないポイントもあります。
 例えば、起業してワーカーが増えて一番組織として悩むことは、起業した価値観を共有し続けることが難しいということだと思うんです。それと同じように分散していくことで、先ほど言われたエンゲージメントみたいなものがどうなっていくのかと考えた時に、その企業の価値や経営的思想みたいなものをしっかりと共有化される場所が、センターオフィスに求められるポイントではないかと感じます。
先ほどの海外オフィスの話でも、アートや皆で共有できる情報が散布されています。それはグローバルな企業になればなるほど、同じ内容を全世界に配置していて、それらは、経営思想や価値観みたいなものを共有するための仕掛けになっているので、それらが中心になりメッセージ性みたいなものを持つ場になっていくんじゃないかなと感じています。ただ、VRやMRといったものが非常に発達し、その場にいるのと同じような状況になれば、人の仕草も見えますので、事情も変わっていくのでしょうね。

古阪氏

 お二人の話をまとめると、企業や組織としての一体感やエンゲージメント、価値観を共有していく場、やはり人間は一人一人で完結する生き物ではないので、集団としての価値観の共有とかメッセージ性を保っていく場として、非常にセンターオフィスの意味が高まっていくのではないかという話だったと思います。
 最近のオフィスを見ていると、アメリカに限って言えば、企業に属さないで働いているフリーランスが6割を超えている、ある統計では8割に達しているんじゃないかという話もあります。でも、最近のアメリカの大きなIT企業を見ていると、シリコンバレーやシアトルにキャンパスとして人が集まってくるような本社オフィスを整えつつあります。バラバラで働いてみたものの、やっぱりみんなで一体になることってすごく必要だなと感じている人が多いような気がしますが、その辺りいかがでしょうか?

海野氏

 まさにその点に着目していました。アメリカに倣えというわけではないですが、アメリカは日本の1~2周先を行っていますよね。いま何が起こっているかというと、3年くらい前には個人成果主義で、成果を上げさえすればどこでどう働いてもいいということで、在宅勤務がかなり多かった。最近何が起こっているかと言うと、逆にオフィスに戻れとして、協創成果主義に評価や価値観が移ってきています。彼らが実体験を元にして、それが企業に対する価値や成果を生むんだとエビデンスとしてちゃんと示されたからだと思うんです。ただ日本がそれと同じことを繰り返しているのかと言うと、そうでもないかなと思うんです。日本人はやっぱり慎重ですから、きちんとシミュレーションや個人のマインドなどを確かめながらハンドルを切っている。だからアメリカより2~3年遅れているというのはあると思うんですが、決して日本はアメリカに遅れているのではなく、日本は慎重に見極めている段階にいるんだなと思っていました。

古阪氏

 最近アメリカに行かれた溝口氏はいかがでしょうか?

溝口氏

 Tableau社では、日本人の方に説明して頂きました。その方はマイクロソフトから1年前にTableau社のマネージャーになった方で、日本人とアメリカ人の何が違うかを伺ったら、会社の選び方、雇われ方の意識が違うという話をされていました。日本人はやっぱり雇われている感覚、アメリカ人は自分で会社を選んでいて、そこがとても大きな違いだとおっしゃっていました。
 それから、評価制度についても非常に厳しいと話をされていました。マネージャーたるもの人員を年間3割カットしろと人事に言われるそうです。3割ってすごいですよね。20人いる仲間のうち6人はいなくなる。でもそれをやらないと自分の能力が問われるので、頑張りますという話でした。
 評価制度も大変しっかりしているし、何を目指すかも見えている厳しい場所にいる。その代わりミッションを達成している人たちに対してのフィーの扱いや考え方は、日本のそれとまったく違う。その辺の社会の違いを大変感じました。日本ではさすがにそういうことはあり得ないですよね。米国の文化で形成されているワークスタイルやワークプレイスであるので、日本のオフィスでただ同じことをやってもなかなか機能しない。そのような間違いはしたくないなと感じています。

古阪氏

 いずれにしても、いま大きな変革の時期に来ているわけで、特に働き方改革に関して、皆さん個人も企業も関心を持ち始めています。
 ですからオフィスづくりについても、漫然とオフィスに毎日通うのではなく、漫然と自分のデスクに座るのではなく、どういう働き方をしていけば自分もみんなもハッピーになれるのか、企業もみんなWin-Winになるのかということを考えながら、日々のワークライフを送っていきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

以上

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