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地震に備えた安全なオフィスづくり オフィスの地震対策

地震対策の必要性

災害時において、従業員の安全を保持し、顧客や自社の災害リスクを軽減することは企業の社会的責任の重要事項とされています。
オフィスの地震対策はその一環として、家具の転倒、落下、移動などによる被害を軽減し、けが人を出さない努力や従業員をはじめとする帰宅困難時への対応に備えておくことが大切です。
企業が自ら被災後の経済活動や救護活動を円滑に行えるように備えておくことは、社会にとって非常に重要なことです。もう一度、地震に備えた安全なオフィスづくりを目指して、オフィスを見直してみましょう。

あなたのオフィスは安全ですか?

地震対策を行う上で、自分のオフィスがどの程度安全なのか、地震による大きな揺れが発生したときにどのようなリスクが存在しているのかを知ることが、対策を進める上で重要なことです。

地震被害を抑制するオフィスづくり

オフィスづくりにおいて、オフィスの機能別にスペースを配置・配分するゾーニング、それによって必要な家具を選定し、レイアウトするというプロセスが一般的ですが、それぞれの段階において地震対策を考慮することが重要です。

安全対策のポイント

オフィスレイアウトで工夫をしたうえで、家具類の固定を行いましょう。
床や壁への家具類の固定は、床や壁の仕様によってその性能が大きく左右されますので、レイアウトでできる限りリスクを軽減した上での実施をお奨めします。

設置の工夫

大きな家具は、設置場所の安全性を配慮し、必要に応じて固定を行います。

避難経路に転倒・移動するような家具・什器を置かないようにする。

デスクまわりやオフィスの中央に背の高い家具を置かないようにする。

避難経路の幅は1.2m以上確保する。

日常運用のポイント

常に防災意識を持って、日頃から災害時に起こることを想定しておくことが重要です。

離席する際は椅子を机の中に入れておく。デスクの下は、緊急避難場所。物は置かないようにする。どうしても必要がある場合は、専用のデスク下収納家具に整理する。

パソコンなどのOA機器はベルト・ワイヤー・ゲル等の耐震グッズで固定する。

オフィス内は整理整頓し、書庫の上などには者を置かないようにしましょう。

脱出や救助活動のための工具は整理・整頓、点検しておく。

床はカーペットにしておくことも、滑り止めや休息時に有効です。

重要書類、データバックアップは必要な耐火性能を有する場所に保管しておく。

家具固定の必要性と固定方法

2011年に発生した東日本大震災では、震源から離れた首都圏の高層建物内でも、「長周期地震動」が一因として考えられる室内被害が多く発生しました。
「長周期地震動」が発生すると、高層建物の高層階では、下層階に比べ揺れが大きくなる傾向があり、家具類の転倒・収納物の落下に加え「移動」が発生する危険性があります。家具の移動により、挟まれる、ぶつかることによる負傷や、通路を塞ぐなどの避難障害が生じる可能性もありますので、レイアウトの工夫に加え家具の固定は長周期地震動に対する備えとしても欠かせません。

    長周期地震動の特徴
  • 1)海の波のように遠くまで伝わります。
  • 2)地震動が終息した後も、数分に渡って揺れることがあります。
  • 3)東海・東南海・南海地震などのM8クラスの地震が起こると、都内の50階程度のビルでは片振幅2mに達する揺れが10分以上継続する可能性があります。
  • 4)高い建物の高層階が被害を受けやすい特徴があります(建物や地域によって異なる)。

家具の固定方法は、床、壁の材質・工法により適切な判断が必要です。固定工事にあたっては必ず専門家にご相談ください。
床に固定するより壁に固定する方がはるかに小さな固定力で済むため、施工性や経済性を考慮すると大変有利な固定方法と言えますが、現代の建物は、壁の固定力に期待できない場合が多く、床への固定と合わせ活用することを推奨いたします。

床固定

コンクリートスラブに直接固定することを前提とします。二重床(フリーアクセスフロア)の場合、必要に応じて充填材を介して床スラブにアンカーボルト固定するなどの措置を施します。

コンクリートスラブに直接固定することを前提とします。二重床(フリーアクセスフロア)の場合、必要に応じて充填材を介して床スラブにアンカーボルト固定するなどの措置を施します。

特に置敷きタイプの二重床の場合、床スラブとは一体になっていないことが多く、二重床だけに固定しただけでは十分な固定力が得られません。

壁固定

コンクリート壁以外では信頼できる壁とは言えず、軽量鉄骨下地によるボード壁や可動間仕切(パーティション)などは、あくまでも床固定の補助として考えるべきです。

コンクリート壁以外では信頼できる壁とは言えず、軽量鉄骨下地によるボード壁や可動間仕切(パーティション)などは、あくまでも床固定の補助として考えるべきです。

特にスチールパーティションは構造体に結合されていないことが多く、収納家具など大型家具の固定には向きません。

壁が構造体に結合されているかどうか不明な場合は、建物管理会社等に問い合わせて確認します。

家具の選定

地震にも対策対応ができる家具を選定しましょう。また、地震や災害に備えた家具も準備しておきましょう。JOIFA会員企業は地震に対する家具類の様々な研究を重ねています。詳しくは、オフィス管理士、JOIFA会員企業にご相談ください。

地震に対策対応ができる家具の例
地震対策に役立つ家具の例

書庫型防災用品保管庫

従業員の防災グッズ・水・食料などの保管に役立ちます。50人分の目安として保管庫(W900×H2000×D450)3台分。

エレベータ内設置型防災用品保管箱

エレベーターの非常停止による内部閉じ込めにも備えておきましょう。

防災用品保管機能付ベンチ

ロビーなどの公共スペースに・帰宅困難者の受け入れ・要救護者の応急手当・仮眠時などに役立ちます。

事業者に求められる備蓄

東京都は帰宅困難者対策を総合的に促進するため、「東京都帰宅困難者対策条例」を平成25年4月から施行されています。この条例で事業者は、従業者の3日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努めなければならないと定めています。

ガラス類(食器など)や薬品(ビン類)を整理保管する家具

ビジネスキッチン(食器)
オフィス内で使用する食器などはビジネスキッチンに格納しましょう。

薬品保管庫(ビン類)
薬品などは安全な場所に設置した専用保管庫に格納し管理しましょう。

棚類・書架などを安全に設置するオプションの例

天つなぎパーツ
背が高く、一連あたりの重さが重たい棚類・書架などは専用部品を使用し、安定性を配慮した設置工事を専門業者に依頼しましょう。
棚類、書架は、JIS規格または同等性能を有するものを選定しましょう。

JOIFAの地震対策活動

1. 認定オフィス管理士(COMJ)

JOIFAでは、地震対策を含めオフィス様々な問題を解決できるスキルを持った人材を育成することを目的として、認定オフィス管理士(COMJ)制度があります。

2. 東京消防庁との連携

JOIFAは、東京消防庁と連携を強化しオフィスにおける災害の軽減化に向け、共同の研究や意見交換等を定期的に実施しています。

3. 委員会等の設置

JOIFAでは、家具の転倒防止等、安全性に対する研究を委員会などを設置し、規格化、ガイドライン化を進めています。

オフィス管理士認定証
東京消防庁発行:対策ハンドブック 表紙
家具類の転倒・落下・移動防止

「地震に備えた安全なオフィスづくりvol.5」の発刊にあたり

東京消防庁が、近年日本国内で発生した地震を調査したところ、地震による負傷者の負傷原因のうち、家具類の転倒・落下・移動によるものが3割から5割と大きな割合を占めていることがわかりました。
最大震度7の激しい揺れが2回発生し、観測史上初めて長周期地震動階級4を観測した平成28年熊本地震でも、家具類の転倒等による 大きな被害が発生しています。さらに、発生が危惧されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震でも、家具類の転倒等による大きな被害 が想定されており、その対策の普及が急がれるところです。
東京消防庁では、過去に発生した地震の教訓と課題を踏まえ、オフィス家具類や家電製品の転倒・落下・移動防止対策について、 一般社団法人 日本オフィス家具協会をはじめとする関係業界・行政機関等のご協力を得て、「家具類(オフィス家具・家電製品)の転倒・落下防止対策に関する調査研究委員会」、「長周期地震動等に対する高層階の室内安全対策専門委員会」等を設置し、検討をかさねてきました。これらの検討結果をとりまとめ「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」を発刊し、関係業界・行政機関と連携して、オフィス家具等の転倒・落下・移動防止対策の周知・啓発を行ってまいりました。
今後も、家具類の転倒・落下・移動防止対策を推進するためには、行政と関係業界が連携することが対策の要となり、負傷者軽減につな がるものと考えております。
本書が地震時の被害軽減のため、オフィスの安全対策の大きな役割を担うことを切に願うものです。
東京消防庁

東京消防庁との連携

JOIFAは、東京消防庁と連携を強化し、オフィスにおける災害の軽減化に向け、共同の研究や意見交換等を定期的に実施しています。
東京消防庁ホームページ内の家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック、および記載のチェックリストをご活用ください。

参考文献・参考資料

  • 『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』発行:東京消防庁
  • 『職場の地震対策』発行:東京消防庁
  • 『非構造部材の耐震設計指針・同解説及び耐震設計・施工要領』発行:(社)日本建築学会
  • 『地震時における家具等の転倒に関する振動試験とその理論的考案』(1978)石山祐二
  • 『平成23年度 長周期地震動等に対する高層階の室内安全対策専門委員会報告書』発行:東京消防庁
  • 『東日本大震災に伴う地震発生時のアンケート調査結果』発行:東京消防庁
  • 『首都直下地震帰宅困難者等対策協議会報告書』発行:内閣府